爽籟抄
同人の作品集『雪月集』(5月号)より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。
“山焼きの煤の降りこむ露天風呂
紅梅に烟れる雨の不器男の忌
巌頭に彳てる雄鹿や探梅行
紅梅に吸ひ込まれゆく夕べかな
竹林に竹垣新た春の雪
平飼ひの鶏が駆け込む遅日かな
福耳と言はれて痒し木々芽吹く
草の芽や読めばかさばる新聞紙
野焼見し身の昂りを湯に沈め
冴返る頁繰る手の脈見えて
釣り船のひとりに傾ぐ日の永し
塔かげの風のけだるき袋角
失言を齢で逃ぐる春炬燵
立春や総身映し拭く玻璃戸
窯出しの壺冬草に寝かせたり
寒明の鍵盤に五指ひらきけり
風邪の子の女雛ばかりを折りにけり
心から声の出てゐる黄水仙
雪折の尖れる口の叫びかな
雪吊の頂絞るしやがれ声
風花集より
同人の作品集「風花集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。
青麦や謝らぬ子の足を拭く
鉢の芽をまた見に行つてをりにけり
カトレアが運ばれて春開店す
鳩に囲まれ新社員メール打つ
春駒の陰茎不意に腹叩く
菫消ゆる如風未だ雪の如
囀や縛りし本を積み上げて
南風集より
会員の作品集「南風集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。
花見ては花忘れゐる時間かな
大都市に立たされてゐる桜かな
箱罠の錆に草の芽ふれにけり
ずつと花盛り誰にも振り向かれず
囀りやテレビ画面の真つ暗に
梅の実のびつしりと待つ父の家
春蟬や草のにほひの投票所
薔薇の渦覗けば覗き返さるる
初日差すちちより継ぎし檜山
ゆらゆらとうねる土塀や春の鹿
← 2026年8月号
|
