『南風』2026年7月号より

爽籟抄

同人の作品集『雪月集』(5月号)より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

山焼きの煤の降りこむ露天風呂
小野伶
紅梅に烟れる雨の不器男の忌
越智哲眞
巌頭に彳てる雄鹿や探梅行
前田佐吉子
紅梅に吸ひ込まれゆく夕べかな
阪本道子
竹林に竹垣新た春の雪
石川恭子
平飼ひの鶏が駆け込む遅日かな
大高松竹
福耳と言はれて痒し木々芽吹く
武田佐自子
草の芽や読めばかさばる新聞紙
志貴春彦
野焼見し身の昂りを湯に沈め
田村紀子
冴返る頁繰る手の脈見えて
福本葉子
釣り船のひとりに傾ぐ日の永し
松尾睦月
塔かげの風のけだるき袋角
辻本靖子
失言を齢で逃ぐる春炬燵
稲井優樹
立春や総身映し拭く玻璃戸
吉村冨恵
窯出しの壺冬草に寝かせたり
赤川雅彦
寒明の鍵盤に五指ひらきけり
林里美
風邪の子の女雛ばかりを折りにけり
帯谷麗加
心から声の出てゐる黄水仙
星野早苗
雪折の尖れる口の叫びかな
新治功
雪吊の頂絞るしやがれ声
日野久子

風花集より

同人の作品集「風花集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

青麦や謝らぬ子の足を拭く
館ゑみ子
鉢の芽をまた見に行つてをりにけり
市原みお
カトレアが運ばれて春開店す
小西さき江
鳩に囲まれ新社員メール打つ
大熊光汰
春駒の陰茎不意に腹叩く
板倉ケンタ
菫消ゆる如風未だ雪の如
原隆三郎
囀や縛りし本を積み上げて
澤木恭子

南風集より

会員の作品集「南風集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

花見ては花忘れゐる時間かな
ばんかおり
大都市に立たされてゐる桜かな
團俊晴
箱罠の錆に草の芽ふれにけり
横田朱鷺子
ずつと花盛り誰にも振り向かれず
笠原小百合
囀りやテレビ画面の真つ暗に
菅井香永
梅の実のびつしりと待つ父の家
村井丈美
春蟬や草のにほひの投票所
天風月日
薔薇の渦覗けば覗き返さるる
藤本智子
初日差すちちより継ぎし檜山
木村房江
ゆらゆらとうねる土塀や春の鹿
田窪真実
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