『南風』2026年10月号より

爽籟抄

同人の作品集『雪月集』より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

目借どき蒸されし肌を刃のすべり
井手千二
口口口色鯉に夏来りけり
越智哲眞
朴の花夕暮は身の細りけり
団藤みよ子
豆ごはん父より高く母に盛り
藤川嘉子
地震あとの山迫り来るキャンプかな
阪本道子
喫泉に鉄のにほひや雷の後
上村昌美
玉葱に泣く今が幸せかもしれず
池之小町
五月来や紅茶おかはりできる店
高原初子
友を訪ふえご散る午後のケアハウス
田村紀子
蝶々のおほかたは翅舞ひきたる
板垣悦子
窓過ぎる野茨の白旅はじまる
福山千代子
葉裏より天道虫の覗きけり
間島律水
麦秋や渡来の王の翔けたりと
樋口千惠子
豆めしや二階へ母のこゑ若し
西浦佳苗
逃水を踏む逃水の向かうの人
赤川雅彦
さくらんぼ分けつつ数を教へつつ
帯谷麗加
初夏や水浴びて象黒々と
星野早苗
鴨足草揺らして猫の壁に消ゆ
新治功
巣のひそむ庭木と知りてこどもの日
桑原規之
日傘さすことなき父の忌なりけり
日野久子

風花集より

同人の作品集「風花集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

たまの休みは花運ぶ蟻見てをり
大熊光汰
法廷に茂りの迫り来てをりぬ
上田窓子
誰にも見せぬ夜の裸で飯つくる
板倉ケンタ
蓮の葉に日傘袋の飛びて載る
若林哲哉
アガパンサス登校の子を透かしけり
中村幸子
スカートの裾をつつしむ茅の輪かな
市原みお
老斑のまだなき手足昼寝覚
原隆三郎
白南風や夫と見紛ふ竿さばき
館ゑみ子

南風集より

会員の作品集「南風集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

葉騒してあををさむしの擬死より醒む
延平昌弥
溺れ死にかけてその日の端居かな
東野礼豊
膨らんでゆく血の玉や夏野原
八田吏
聞けば祖母飯匙倩の頭蓋を靴で叩いた
崎原柚
階段をつたひ落ちくるサイダー拭く
稲葉守大
夏の暮ペットショップの犬がちがふ
笠原小百合
山あげの山組みあがり照りにけり
卯月紫乃
実石榴の割れてうしろの街濡れて
両角鹿彦
草笛にするどく犬の耳をたて
関本惠美子
玉音は聞こえず空気うすくなる
髙嶋洋子
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