『南風』2026年9月号より

爽籟抄

同人の作品集『雪月集』より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

椎の花夜空が密とありにけり
小野伶
畑打つや団子のやうな山三つ
越智哲眞
右眉に梃摺ってゐる鳥の恋
前田佐吉子
朝風の木伝ふひびき仏生会
団藤みよ子
み仏にうすき蹼春ともし
藤川嘉子
揚羽蝶卵産むなり飛び出せり
阪本道子
我が来ねば誰も来ぬ墓百千鳥
上村昌美
バードデイ本から本へ浮気して
池乃小町
夕暮はミルクの濃さに遅桜
石川恭子
桜餅友の繰りごと聞くつもり
田村紀子
新社員机に角のありにけり
松尾睦月
鷺よりも白蝶高く消えにけり
辻本靖子
短信や咲けば濁りて白椿
西浦佳苗
神輿庫桜の蕊の降るばかり
小野義倫
馬の仔の尿を吹き上ぐ夏岬
帯谷麗加
草に落としし巣を歩く足長蜂
橘永子
振り返らず子は連翹を曲がりけり
新治功
柿若葉高さの違ふ父の眉
杉本康子
黒猫の逃足ムスカリを跳んで
桑原規之
夜桜の城の出口に迷ひけり
日野久子

風花集より

同人の作品集「風花集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

白南風や服のかたちに体入れ
上田窓子
朝も夜も会社の壁に蜉蝣をり
大熊光汰
夜濯やまだ旅先にあるこころ
市原みお
巫女の手が触れ風鈴の鳴りにけり
鳥山百合子
噴水に向かひ昼餉や同僚めく
隂山恵
瀧風に百合の雄蕊のかくかく揺る
若林哲哉
無い放射性セシウムを海風に思ふ
板倉ケンタ
うつむきてメロンソーダを混ぜてをり
臼井淳子

南風集より

会員の作品集「南風集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

夏の木の一枝一枝に出会ひけり
野村茶鳥
柄杓おく音に落ちたる実梅かな
佐々木千賀子
先生に沢蟹見せにいちいち来る
横田朱鷺子
明日帰る荷物の上の夏帽子
雪岡久代
青芒刃泡立つごとく錆び
近藤匡也
泡盛になべて卍となりにけり
両角鹿彦
嬰児の金の産毛や滝飛沫
團俊晴
時計ごと摑む手首や夏の果
菅井香永
蟻を見て図鑑見てまた蟻を見に
佐藤典子
物語と秋の灯の間に僕がゐる
鬼糸巻マンタ
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