爽籟抄
同人の作品集『雪月集』より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。
椎の花夜空が密とありにけり
畑打つや団子のやうな山三つ
右眉に梃摺ってゐる鳥の恋
朝風の木伝ふひびき仏生会
み仏にうすき蹼春ともし
揚羽蝶卵産むなり飛び出せり
我が来ねば誰も来ぬ墓百千鳥
バードデイ本から本へ浮気して
夕暮はミルクの濃さに遅桜
桜餅友の繰りごと聞くつもり
新社員机に角のありにけり
鷺よりも白蝶高く消えにけり
短信や咲けば濁りて白椿
神輿庫桜の蕊の降るばかり
馬の仔の尿を吹き上ぐ夏岬
草に落としし巣を歩く足長蜂
振り返らず子は連翹を曲がりけり
柿若葉高さの違ふ父の眉
黒猫の逃足ムスカリを跳んで
夜桜の城の出口に迷ひけり
風花集より
同人の作品集「風花集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。
白南風や服のかたちに体入れ
朝も夜も会社の壁に蜉蝣をり
夜濯やまだ旅先にあるこころ
巫女の手が触れ風鈴の鳴りにけり
噴水に向かひ昼餉や同僚めく
瀧風に百合の雄蕊のかくかく揺る
無い放射性セシウムを海風に思ふ
うつむきてメロンソーダを混ぜてをり
南風集より
会員の作品集「南風集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。
夏の木の一枝一枝に出会ひけり
柄杓おく音に落ちたる実梅かな
先生に沢蟹見せにいちいち来る
明日帰る荷物の上の夏帽子
青芒刃泡立つごとく錆び
泡盛になべて卍となりにけり
嬰児の金の産毛や滝飛沫
時計ごと摑む手首や夏の果
蟻を見て図鑑見てまた蟻を見に
物語と秋の灯の間に僕がゐる
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