『南風』2026年8月号より

爽籟抄

同人の作品集『雪月集』より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

田の神に迫れる野火を打ちにけり
小野伶
時鳥山湖をりをり漣たたみ
中村君永
ゆく春や老化は病とは違ふ
井手千二
一塊の数珠子一塊の雲の中
越智哲眞
赤穂より荒塩とどく梅のころ
前田佐吉子
あめつちのまだ冷たくて立子の忌
団藤みよ子
引っ越しの助手席に抱く君子蘭
藤川嘉子
忌日過ぐらば旅に出む花ミモザ
高原初子
雛の前過ぐ介護士に手を引かれ
志貴春彦
冬の木を離れて父を想ふかな
駒田弘子
オムレツの少し歪や花の雨
田村紀子
鳥籠をあづけられたる春休
辻本靖子
瀬田蜆湖より近江明けにけり
稲井優樹
山辛夷でつかい月の上りけり
赤川雅彦
山びこも少年が好き風光る
小野義倫
電柱に肉感のある春の月
帯谷麗加
犬と来て犬と帰りぬ雛の客
星野早苗
その中に空席一つ卒業式
新治功
きさらぎのシンクに鈍く己が顔
桑原規之
料峭やガラスの山にガラス捨て
日野久子

風花集より

同人の作品集「風花集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

なめくぢの角たてて這ふレタス剥ぐ
中島恵子
人影に従きくる鯉や椎の花
市原みお
ぼうたんを綺麗と思はねばならぬ
若林哲哉
躑躅急ぐ音楽を頭に流し
大熊光汰
さみどりの蜘蛛付いてゐる鋏かな
片岡智子
家具になつてくれない家具と暮の春
板倉ケンタ
睨めまはし限界村の鯉幟
和泉澄雄
人よりも大き盆栽夏に入る
中村幸子

南風集より

会員の作品集「南風集」より、主宰の村上鞆彦が推薦する句をご紹介します。

ウクレレの洞昏く夏来たりけり
八田吏
猪か鹿か緑雨の頭蓋骨
稲葉守大
冷房車に傘一本の冷えてある
五月ふみ
水掬ふ指の明るさ五月来る
野村茶鳥
遠雷や母の隣りに眠りし頃
横田朱鷺子
母とをり牡丹のゆるる風を待ち
新井ちよ
よりどりのハンカチいつまでも少女
藤本智子
形代の流るるまでもなく消えし
麻生健一
母の日や庭の草花加へ活く
野添敬子
口笛の窓を出てゆく更衣
赤城嘉宣
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